町田 忠
私のスマホに1本の電話が入りました。
「北柏ふるさと公園でタヌキモの花が咲いているらしい。確認してくれないか?」
声の主は柏市の自然の調査をしているグループの会長でした。
北柏ふるさと公園といえば私が調査を担当している地域内。必然的に私が確認をしなければなりません。
昨日9月21日午前、出席を予定していた英語サークル参加を急きょキャンセルし、現地へ向かいました。
北柏ふるさと公園内の、我々が作ったベニイトトンボ保護区近くの丸い池。指定されたところへ行ってみると、小さな黄色い花が点々と咲いていて、すぐにタヌキモらしい花とわかりました。
タヌキモとは水中に生息する植物でその名(狸藻)の通り、タヌキのしっぽのように見えます。根のない浮き草で水中の茎に多数の嚢(のう=袋)を持ち、そこに微生物を閉じ込めて自らのための栄養を吸い生きている食虫植物(carnivorous plants )です。ほぼ全国的に絶滅危惧種に指定されていて柏市では発見されていません。
タヌキモが柏市内で見られる??野生のタヌキモを見たことがない私は興奮のボルテージが上がりました。
早速、カメラを出して、その花を撮影しました。直径は12mmくらい。近距離撮影とはいえピントを合わせるのに苦労しました。これがその写真。
真っ黄色。目を近づけてよく見ると、とてもかわいらしい。これが虫を食べて生きている草の花なのか!
精細な観察を始めると、在来種のタヌキモとは微妙な違いがわかり始めました。上唇と下唇の大きさがタヌキモとは逆で、この花は上唇が大きい。気づけば水面上に伸びている花茎もタヌキモより短い。下唇の褐色の斑紋が大きく違う。
突き詰めていくと、この植物は外来種のオオバナイトタヌキモであることがわかりました。残念。日本のタヌキモではありませんでした。
11本見つかったうちの1本を研究用に引き抜いてみました。
ご覧のように水面下の茎には小さな袋のような嚢がたくさん見られます。タヌキモは北極を除く世界中で見られ、英語ではbladderwort 。bladder は嚢、wort は草。嚢を持つ草という意味でしょう。嚢は獲物を入れるtrap 。そして、そのタヌキモの一種オオバナイトタヌキモの英語名はUtricularia gibba 。Utricularia はタヌキモ属、gibba はふくらみ。下唇にある盛り上がった部分を指しているようです。
このオオバナイトタヌキモはアメリカから持ち込まれた園芸種で、それが流出し野生化したものだろうと言われています。
最近は食虫植物の人気が高まっているようです。水中で生きるタヌキのしっぽみたいな植物が夏になると水面上に茎を伸ばしかわいい花を咲かせる。それを観賞するのはきっと楽しいことでしょう。しかし、外来植物を自然界に放つのはご遠慮願いたいものです。
おかげでこちらもいい勉強をさせてもらいましたが。